ラブドールを調べていくと、必ず「フルシリコン」という言葉にぶつかる。そして値段を見て一度手が止まる。18万円のフルシリコンもあれば、67万円のフルシリコンもある。同じ「フルシリコン」なのに3倍以上違う。この差が何なのかを、正規代理店の在庫を実際に価格順に並べて確かめた。
タクです。俺が持っているのはTPEの個体で、フルシリコンは所有していない。だからここでは触った感想ではなく、素材の性質と価格の構造を書く。素材そのものの入門はTPEとシリコンの比較記事にまとめてあるので、こっちは「で、いくら出すと何が変わるのか」の話だと思ってほしい。
30秒で決めたい人へ
最初のフルシリコンは18万円台から。40万超は「顔と肌」に払う世界
同じブランド・同じ150cmで、TPEが13.5万、フルシリコンが18.2万。差は約4.7万円だ。そこから39万・45万・67万と段が上がるが、上の段で増えるのは顎の可動・肌の質感表現・シームレス構造で、素材そのものは同じシリコンである。だから「シリコンを試したい」だけなら18万円台で足りる。
価格の階段は下の表で全部並べた。重さの話も必ず読んでほしい。
まず素材の話。シリコンで何が変わるか
ざっくり言うと、TPEは柔らかくて安いが手がかかる、シリコンは硬めで高いが手がかからない。この一行が本質で、あとは全部そこから派生する。
- 油が出ない。TPEはオイルが染み出すので定期的なパウダーがけが要る。シリコンはこれが無い
- 汚れと色移りに強い。濃い色の服を着せたまま置いても、TPEほど神経を使わなくていい
- 匂いが出にくい。TPE特有の新品の匂いの問題が、そもそも起きにくい
- 熱と経年に強い。長く持たせる方向では有利
- そのかわり硬い。柔らかさで言えばTPEのほうが上で、ここは好みが割れる
- そのかわり重い。同じ身長でシリコンのほうが重くなる
手入れの手間が減るのは、実際に持つと効いてくる。俺はTPEの個体でパウダーがけをやっているが、面倒だと感じた瞬間から手入れの間隔が伸びるのが正直なところだ。手入れの記事に書いた作業が丸ごと軽くなる、というのがシリコンにお金を出す一番現実的な理由だと思う。
価格の階段。同じ「フルシリコン」でも4段ある
| 段 | 実売の目安 | 実例(150〜160cm級) | この段で増えるもの | 在庫を見る |
|---|---|---|---|---|
| 比較用:TPE | 13〜21万円 | MOZU 艾琳 150cm 135,000円/WM Dolls Zella 156cm 143,000〜208,500円 | —(基準点) | 150cm台を見る |
| ①入口 | 18万円台 | MOZU 魔趣シリーズ 150cm Cカップ 26kg 182,000円 | フルシリコンであること。手入れの軽さと色移り耐性がここで手に入る | 150cm台を見る |
| ②本格帯 | 39〜42万円 | Irontech Doll Oriental 158cm 396,480円/Sangedoll 158cm 405,000円/ZELEX 159cm 420,000円 | 顎機能(口が開閉する)+リアルな肌質感の表現。人の顔に寄せる方向の作り込み | 150cm台を見る |
| ③シームレス帯 | 43〜46万円 | Fanreal 一体式 155cm 29kg 428,000円/Real Lady 150cm 452,177円 | 継ぎ目のない一体成型。首や股関節の合わせ目が消える=写真に撮ったときに効く | 150cm台を見る |
| ④最上段 | 50〜67万円 | EXDOLL Cyberfusion 155cm 500,000円/AITIAdoll 2.2CFシリーズ 155cm 670,000円 | 「超柔らかい」シリコン=シリコンの弱点だった硬さを潰しにいく段。ここが技術的な最前線 | 150cm台を見る |
2026年9月に正規代理店の150〜159cm帯を価格の高い順に開いて確認した実売価格だ。並べて分かるのは、上の段で増えているのは素材ではないということ。①も④も同じフルシリコンで、値段の差は顎の可動・肌の質感表現・継ぎ目の処理・柔らかさのチューニングという「作り込み」に乗っている。
だからこう言える。「シリコンという素材を体験したい」だけなら①の18万円台で目的は達成される。②以降は、造形と写真の仕上がりに払う世界だ。
いちばん誠実な比較。同じブランド・同じ身長で並べる
ブランドが違うと価格差の理由が混ざるので、同じMOZUの150cm級だけで素材を変えて並べてみる。
| モデル | 素材 | 実売 | 基準からの差 |
|---|---|---|---|
| 艾琳(Alyn)150cm | ビニールヘッド+TPEボディ | 135,000円 | 基準 |
| 酥酥(Sue)150cm | シリコンヘッド+TPEボディ | 163,000円 | +28,000円 |
| 魔趣シリーズ 150cm | フルシリコン(26kg) | 182,000円 | +47,000円 |
ヘッドだけシリコンにすると+2.8万、全身にすると+4.7万。これがフルシリコンの素の値段だ。ヘッドだけシリコンという中間の選択肢があるのも重要で、顔の質感が一番効くと思っているならここで止めるのも合理的になる。正規代理店側も「シリコンラブドール」と「SILICON+TPE」をカテゴリで分けているので、この中間帯は業界的にもひとつのジャンルとして扱われている。
モデル名から価格を引きたい場合はMOZUのモデル一覧にまとめてある。
先に言っておく。重さは確実に増える
フルシリコンで見落とされがちなのが重量だ。150cmのフルシリコンで26kg、155cmのシームレス一体式で29kg。141cmのTPEが23kgなので、身長が10cm上がって素材が変わると、そのぶん確実に重くなる。
29kgは米袋を抱えて階段を上がるのと同じだと思っていい。一人で姿勢を変える、服を着せる、風呂場まで運ぶ——この全部が作業になる。サイズの現実の記事と保管の記事を先に読んでおいてほしい。40万円を出す判断より、29kgを扱える生活かどうかの判断のほうが先だ。
ちなみに軽さを優先するなら、フルシリコンでも小柄な帯を選ぶという手がある。ZELEXの159cmには「スーパー軽量化」と明記された個体もあった。重量はブランドの設計で変わるので、身長だけで諦めなくていい。
よくある質問
日本製の最高峰と比べてどうですか。
価格帯としては重なる。日本製の代表格は49万円台からで、上は70万円台まで行く。今回並べた中国製フルシリコンの③④はちょうどそこに入る帯だ。どちらが上かという話ではなく、作りの思想が違う。日本製側の考え方は国産メーカーの記事に、価格差が何に化けているかはなぜ高いのかの記事に書いた。
「顎機能」は必要ですか。
口が開閉する機構で、39万円以上の帯にほぼ標準で入っている。写真を撮る人には表情の幅が出るので効く。逆に、撮らないなら無くても困らない。オプションで追加できるモデルもあるので、必要かどうか分からないうちは無しで始めるのが安全だ。
シリコンなら手入れは要らないのですか。
軽くなるだけで、ゼロにはならない。洗浄と乾燥は必要だし、油が出ないぶんパウダーがけの頻度が下がるという話だ。基本は手入れの記事のとおりで、素材が変わっても洗って乾かす原則は同じ。
18万円台と40万円台、写真で見分けられますか。
正直、商品写真だと分かりにくい。差が出るのは継ぎ目と肌の質感なので、首の付け根と股関節を大きく写した画像を探して見比べるといい。シームレス帯はここに合わせ目が無い。商品写真だけで判断が付かないときは出荷前写真の記事の考え方が使える。
まとめ。18万円で素材は買える。その先は造形の値段
フルシリコンの入口は18万円台で、同じブランド・同じ身長のTPEとの差は約4.7万円。油が出ない・色移りに強い・匂いが出にくい・手入れが軽いという素材の利点は、この段で全部手に入る。39万円から上で増えるのは顎機能と肌の質感、43万円から上でシームレス、50万円から上で「超柔らかい」の追求だ。素材が欲しいのか、造形が欲しいのか——先にそこを決めれば、3倍の価格差に惑わされずに済む。そして何より、26〜29kgを扱える生活かどうかを先に確かめてほしい。
